総合診療計画に基づいた治療(口腔内全体の治療を行う)
「木を見て森を見ず」というような治療では長期間の安定は得られない.
“森”は広義にとらえれば“人”の条件といえる.年齢が若いか高齢かに始まり,歯科治療に対する希望は費用面を含めてどうなのか,どのくらいの頻度で通院が可能か,また全身疾患があるか,喫煙習慣があるか,歯のブラッシングが適切にできるか等,これら人の条件を抜きにして治療のゴールを設定することはできない.
つぎに補綴治療を行うにあたり,狭義の“森”である“口”の中全体の状態を観察する.歯がどこに配置しているか,対合する歯があるか,および咬合力は強いか,唾液の量は多いか等を調べる.さらに顎堤の状態,また発音・違和感に対する感受性や,審美性をどこまで追求するかを考慮していく.
そして,“木”すなわち1本1本の“歯”の状態をみていく.う蝕の有無,歯周病の状態,有髄歯か無髄歯かを調べ,その歯の予後を想定する.
最終的には,これまで述べた条件すべてを勘案したうえで1口腔単位の総合診療に基づいた治療を決定することになる.したがって,あくまでも患者さん個々に合わせたオーダーメイド治療を行う必要がある.