下顎-コーヌス義歯、上顎-クラスプ・アタッチメント義歯

 2014年4月初診、63歳女性。上下顎の義歯修理を行 い、右下2にワイヤークラスプを、右上7に鋳造クラスプをそれぞれ装着した。その後暫く患者さんの都合により治療が中断され、2016年5月に再開した。
 下顎位は右側上下7で確保されていた。患者さんはここで主に咀嚼するため、右下7が咬合力を負担しきれず荷重負担となり、その結果同部の歯周病が1年前に比べて悪化していた。対合歯のない下顎前歯および左下45の挺出がみられ、咬合平面は左側に向かって上がるように傾いていた。上下顎4本の犬歯はすべて失われていた。

 ここで右上4についてであるが、根尖に大きな根尖病変があり、通常の感染根管処置では治療困難であるため、歯根端切除手術の適応になると思われる。そこで歯根端切除術を施すか、あるいは抜歯して反対側に移植するか迷ったが、支台歯が左右側にあれば義歯の安定にとって都合がよいため、今回は、根尖をスーパーボンドにて閉鎖したの ち、左上3部に移植した。なお、受容側の顎堤はスライド中央にみられるように極端に細い板状の様相を呈していた。そこで、メスを用いて顎堤中央を分断し、唇側の骨を唇側に移動し、そこに右上4を移植した。移植は成功したが、咬合平面に対して、唇側に相当傾いた形態になってしまった。2016年4月に磁性アタッチメントを装着した。(スライドは2017年7月) ここに1本支台歯があることで、上顎義歯の安定性は向上した。

 再初診終了時の口腔内の状態。下顎はコーヌス義歯を、上顎はクラスプ・アタッチメント義歯をそれぞれ装着し た。下顎は、スライド左下にみるように、右側の顎堤がひも状であり著しく劣型である。しかも右下3がないため、義歯の安定が得られるか当初心配したが、案外安定していた。しかし、右下7が将来失われた場合はどうなるか、やはり心配である。

 再初診時および再初診終了時のパノラマX線写真の比 較。抜歯した歯はなく、残存歯すべてを動員して何とか義歯の安定が得られた症例である。