コーヌス義歯


 義歯の構成要素の1つに,義歯に加わる種々の力を支台歯に伝える支台装置がある.これには,クラスプ,アタッチメントおよびコーヌス冠があり,症例によって使い分けるが,最近はコーヌス冠を用いる場合が多い.なお,この冠を用いた義歯をコーヌス義歯と呼称することにする.
 コーヌス義歯の特徴は,
1.支台歯の辺縁が義歯床で覆われないため,唾液の自浄作用が期待でき,う蝕,歯周病になりにくい.
2.可撤式なので,ブリッジなどに比べて支台歯の清掃が行いやすい.
3.コーヌス冠を用いて支台歯を連結固定(2次固定)することができる.ブリッジの場合も支台歯を連結するが,支台歯間の距離が長いと難しい.これに対しコーヌス冠の場合は,支台歯間の距離が長くても適応できる.
4.ブリッジの時にみられるセメントの脱離(特に片側脱離)が生じにくい.
5.コーヌス義歯の義歯床の部分においても,咬合力を負担できる.
6.ブリッジはセメントにて完全に支台歯に合着してしまうが,コーヌス冠は取り外しが出来る.取り外しが可能なので将来の口腔内の変化に対応できる.
7.欠点としては,外冠前装部に硬質レジンを用いるため,メタルボンド冠に比べ,やや審美性が劣る.また臨床術式および技工操作が複雑であり,費用も若干高い.
 一般的に患者さんは固定式の補綴装置を希望する.しかし考えてみると,メガネ,イヤリング,ネックレス,腕時計等を装着したままで清掃するだろうか? なぜ,口の中のものを取り外してはいけないのか? 外して清掃するほうが清掃しやすいはずである.もちろん歯は臓器の一部なので,同じ条件で比較すること自体に無理があることも承知している.私も以前は,固定式のブリッジを多用していた.そして沢山のトラブルに遭遇してきた.しかし,可撤式にしてみると沢山の利点があることに気づいた.したがって,前歯部等審美領域を除く欠損歯列に対する補綴治療の第1選択は可撤式が好ましいと今は考えている.一方,可撤式にすると誤嚥することを危惧する人がいる.確かに,今迄1例誤嚥を経験したが,頻度は著しく少ない.食事中は外れないが,清掃時は直ぐに撤去できることがコーヌス義歯の必要条件である.