15.右下8を左下6に移植した症例

 2004年11月初診、43歳男性。主訴は、左下6抜歯後の治療相談。左下⑥7⑧のブリッジが装着されていたが、左下6にヒビがはいり、先月抜去したとのこと。移植、インプラントについて本で調べたが、もっと詳しく知りたいとのことで来院。移植、インプラントそれぞれの利点・欠点を述べたが、今回患者さんは歯の移植を選択された。同時に、舌側転位した左下5の整直も行うことで合意した。
 スライドは05年2月、歯の移植を行う直前の口腔内の状態。半埋伏の右下8の歯根膜をなるべく傷つけないで抜去することが成功への鍵である。(この時は、ドナー歯に矯正力を与えていないが)2月5日に歯の移植を行い、4月23日に左下5の歯科矯正を開始した。なおこの際、移植歯も固定源として参加させた。

 2005年10月、初診終了時の状態。清掃性の観点から、左下にもう一度固定性のブリッジを装着するつもりはないが、左下7部のスペースが気になるかを調べるために、暫間被覆冠で暫く経過を観察した。その結果、まったく気にならないとの回答を得た。左下8にクラウンを装着したが、右側方運動時に咬頭干渉が生じた。口腔内にて調整したために、咬合面形態が悪くなってしまった。

 2018年9月の状態。この13年の間に、左下5メタルボンド冠の咬合面の破損修理、および歯科矯正後のあと戻りのために左下5、6間のコンタクトの付与をそれぞれ何回か行った。なお左下5は、仮着しておいたため後の修正・修理が可能である。
 患者さんは、ストレスが溜まる?と右側上下大臼歯の自発痛が生じる。しかし大概、力が原因で暫くすると自然に治癒することを繰り返してきた。ところが20年2月、また痛みがあるということで来院したが、右下7の遠心に大きなう蝕が見つかった。以前のリコールの時、完全に見逃していた。AIPCで何とか歯髄の保存に努め、10月にクラウンを装着することができた。
 移植歯自体は、まったく変化がなく経過良好である。移植歯が偏咀嚼主機能歯でないことが一番の理由かと思われる。