条件の悪い歯にコーヌス義歯

1.上顎残存歯がすべて無髄歯

 2014年6月初診,65歳女性.左下8の歯根破折,破折片が舌に触れるが主訴.同部および左上4,右上7の合計3本に歯根破折が認められた.左下8および右上7は抜歯後,暫く放置しても大きな問題はないが,左上4を抜歯するとなると,設計が難しくなる.患者さんは左上4の補綴処置を希望されたので,結局上顎すべての治療にならざるを得なくなってしまった.この理由は,上顎残存歯がすべて無髄歯であり,しかもメタルコアが太く,長いために,どの歯に将来歯根破折が生じてもおかしくないからである.そこで固定式のブリッジを諦めてもらい,可撤式のコーヌス義歯を選択してもらった.
 一方,インプラントを欠損部に装着する歯科医もいると思うが,隣在歯が歯根破折した場合,またインプラントを植立することになり,この先何本打つのですか?ということになりかねない.その点コーヌス義歯なら,歯が抜けたとしても義歯の外形は変わらないので,まず半永久に使用できるであろう.
 20年9月現在,特に問題は生じていない.