22.根面アタッチメント辺縁歯肉の開放(1)

 1985年2月初診,47歳男性.83年に他院にて義歯を製作したが,合わず,使用していないとのこと.84年に上顎左右3および下顎2〜2を東京歯科大学病院口腔外科にて抜歯し,その後補綴科の私が担当することになった患者さん.右上7を除いた残存歯の歯周ポケットが5〜6mmあり,動揺が大きかった.今現在なら,抜髄せずに,コーヌス義歯を選択するかもしれないが,当時の自分の技量では無理.
 とにかく早く義歯を製作したかったので,右上7以外は抜髄し,歯冠を切断した.85年4月に,オーバーレイデンチャーを装着した.その後,左上4,5は歯周外科を行い,7月に上顎左右4および下顎左右3に暫間のOPAアタッチメントを仮着し,歯肉の成熟を待った.また,根面アタッチメント辺縁歯肉の開放を目指していたので,暫間義歯を修正し,特に舌側開放部の舌感に異物感が生じないか患者さんの反応を確かめた.

 暫間アタッチメントの辺縁歯肉が退縮し,安定してきたので,1985年10月に再度形成,印象採得を行い,Bona 604A根面アタッチメントを装着した.

 1985年12月,初診終了時の状態.根面アタッチメント辺縁歯肉の開放の一番の目的は,唾液による自浄作用により,根面カリエスが生じにくくなることへの期待である.さらに,歯周病の予防もできれば尚更結構なことである.もちろん,義歯を外しての歯磨きが最も大切であることは言うまでもないが,昼食後に歯磨きできる環境にない方は,爪楊枝を使う感覚で歯間ブラシを入れてみてはいかがですかと指導している.
 私が大学を退職したりして,90年3月までの経過しかないのが残念である.