はじめに

欠損歯列に対する補綴治療

 1980年に東京歯科大学を卒業後、同大学大学院で歯科補綴学を専攻・修了しました。その後、同大学病院に3年間助手として勤務し、つぎに安田火災歯科診療所に6年間勤務したのち、1993年に世田谷区の地で歯科医院を開業しました。歯科医師になって丸40年間、これまで歯科臨床に対して一生懸命取り組んできたつもりです。
 しかし、今になって過去の治療を見返すと、思慮の足りない箇所が見受けられます。特に、欠損歯列に対する補綴治療に関しては、その時点では最善を尽くしたつもりでしたが、根面アタッチメントを装着した歯に生じる根面カリエス、ブリッジの片側脱離、咬合挙上したために生じた残存歯の崩壊、あるいは顎堤の細い部位に埋入したインプラントの予後の悪さなど反省することが多々あります。
 こうした失敗と思われる治療の経過を注意深く観察することによって、反省点を1つ1つ検証すれば改善点がみえてきます。私は欠損補綴治療を行う際、それらの反省点や改善点を踏まえて、まず患者さんの個体差・個人差をよくみることを最重要視するようにしています。なおこの個体差・個人差には、患者さんの全身の健康状態や経済状況も含まれます。つぎに、口腔は細菌、咬合力、感覚、および審美の条件が複雑に絡み合っている特殊な器官ですから、それぞれの条件のバランスをうまく図りながら治療を行うようにしています。現在では、この2点を勘案し、以下に述べる4本の柱を基に欠損補綴の最終目標を組み立て、決定しています。これから各々症例を提示し、説明を加えたいと思います。欠損補綴は大変難しい治療ですが、だからこそやり甲斐のある仕事であると考えています。
 この症例集が特に若い先生にとって少しでもお役にたてることが出来れば幸いです。

古屋元之

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2020年9月22日 「毎日の歯科臨床から」を更新しました。