片側処理が可能なコーヌス義歯

1.短縮歯列より、第1大臼歯まで咬合させたい

 初診時70歳男性。左上5の痛みで来院。デンタルX線写真からは特に異常像はみられないが、歯冠が破折していたため、8月5日に抜髄した。9日に、パノラマX線写真、口腔内写真を撮影した。左右側で大臼歯部の咬合がないため、小臼歯部で咬むしかなく、長年にわたる加重負担により歯冠破折が生じたと想像できる。もし、左上5が失活歯(歯の中の神経がない)なら、歯根破折が生じ、抜歯となっていたであろう。

 そこで左右側大臼歯部でも咀嚼できるように、コーヌス義歯を作製することにした。義歯を片側処理するには、犬歯を含め後方に2本の支台歯が必要である。義歯側に近い支台歯が義歯に加わる垂直的負担を担うが、手前の歯は、後の支台歯の水平的負担を軽減するために必要であると考えている。この場合、支台装置はコーヌス冠でなく、クラスプでも構わない。クラスプの方が見た目は悪いが、歯を削去しないですむ。また、費用も安価である。

 初診終了後3年8ヵ月しか経過していないが、特に問題は生じていない。

2.片側処理のコーヌス義歯で、口蓋を開放

 初診は2009年12月、72歳女性。5年前に、上顎左右に⑤⑥7の延長ブリッジを装着したとのこと。上顎左右6に歯根破折が生じていた。対合歯があり、咬合力が強い人に、延長ブリッジは禁忌である。上顎左右6は、破折した歯根を抜歯し、保存できる歯根には顎堤保存のために根面板を装着した。上顎左右5にはコーヌス内冠を装着した。

 初診終了 コーヌス義歯装着時の状態。上顎左右5を支台歯とし、口蓋を覆う大連結装置で左右の義歯を連結すれば義歯の安定は得られる。しかし、口蓋を覆うことで異物感、発音障害が生じやすい。そこで今回は、上顎左右4にクラスプを付与することで片側処理とし、口蓋を覆わない義歯の形とした。上顎左右4は健全歯であり、歯を切削しないという点からクラスプが一番好ましいが、審美的に嫌がる人もいる。その場合は、稀ではあるが歯を切削し、この歯にもコーヌス内冠を装着するときもある。この際、歯を抜髄しないように注意している。 スライド下段は、初診終了5年6ヵ月後(2016年8月)の状態であるが、特に変化はみられず、順調である。上顎左右5は有髄歯であり、歯根破折しにくいので一応安心している。

 初診時と初診終了時のパノラマX線写真の比較。初診時右上6は3根あるが、左上6は以前に口蓋根を抜歯しており2根しかない。想像するに歯根の数の多い右側で主に咀嚼していたが、歯根破折が生じ咬めなくなったので左側咬みになったが、こちらも頰側根の分岐部に歯根破折が生じてしまい、奥歯で噛めなくなり当院を受診したのではないかと思われる。