はじめに

欠損歯列に対する補綴治療

 1980年に東京歯科大学を卒業後、同大学大学院で歯科補綴学を専攻・修了。その後、同大学病院に3年間助手として勤務し、つぎに安田火災歯科診療所に6年間勤務したのち、世田谷区の地で歯科医院を開業しました。歯科医師になって丸36年間、これまで歯科臨床に対して一生懸命取り組んで参りました。
 しかし、今になって過去の治療を見返すと、思慮の足りない個所が見受けられます。特に、歯が失われた症例(欠損歯列)に対する補綴治療に関しては、その時点では最善を尽くしたつもりでしたが、根面アタッチメントを装着した歯に生じる根面カリエス、ブリッジの片側脱離、咬合挙上(咬み合わせを高くした)したために生じた残存歯の崩壊、あるいは顎堤(土手)の細い部位に埋入したインプラントの予後の悪さなど反省することが多々あります。
 しかし、経過を注意深く観察することによって、反省点を一つ一つ検証すれば改善点がみえてきます。このような経緯で、私が現在考えている欠損補綴は、まず患者さんの個体差をよくみることを最重要視しています。口の中は、細菌、咬合力、感覚、および審美の条件が複雑に絡み合っている特殊な器官であることから、それぞれのバランスをうまく図りながら治療を行う必要があります。また個体差には、患者さんの全身の健康状態や経済状況も含まれます。つぎに、以下に述べる4本の柱を基に、欠損補綴の最終目標を組み立て、決定しています。これから各々症例を提示し、解説を加えたいと思います。欠損補綴は大変難しい治療ですが、だからこそやり甲斐のある仕事であると常々痛感しています。

古屋元之