3.歯の移植(2)

 2011年11月初診,37歳女性.右上6が腫れたとのこと.この歯は歯周ポケットが5〜8mmあり,動揺も著しく保存不可能と診断した.患者さんは,歯科矯正のために第1小臼歯を4本抜歯しており,なおかつ右上5,左下6も失っていたが,今回さらに右上6が加わった.

 上段に右上の経過を示す.まず2012年1月,右上に暫間義歯を装着した.さすがに右上3のクラスプが審美的に好ましくないとのこと.そこで左下8を抜歯し,右上6の欠損部に移植した.(12年2月)
 つぎに下段に左下の経過を示す.左下8をドナー歯として抜去したため,前方に傾斜していた左下7のアップライトが可能となった.こうして左下6部のスペースを拡大したのち,今度は右下8を左下6部に移植した.

 2014年1月,初診終了時の状態.左下6の移植歯は動揺がみられたため,左下7と連結固定した.同部に,フロスが入らないのが難点である.右上は,犬歯と移植歯との間に半歯分のスペースが残ってしまった.このままスペースを残したままという選択肢もあるが,患者さんは望まなかった.しかし,バージントゥースである右上3を削って,ブリッジにするのは抵抗がある.そこで,神奈川県で開業しているN先生に以前教えていただいた方法を採用した.すなわち,右上6(移植歯)は硬質レジン前装冠の近心にグルーブを細工し,セメント合着した.右上3は歯を一切削去せずに,補綴装置を接着性セメントで付けた.こうしておけば,何時か右上3とポンティックの部分の補綴装置は外れるが,その時また接着すればすむ.すごく良い方法であるが,年がら年中外れてしまっては困る方法でもある.実際,14年11月に1回外れたが,その後は何とか外れないでいる.

 初診時および初診終了時のパノラマX線写真の比較.何とか上手にまとめることは出来たが,やはり移植歯の予後が心配である.